EC事業者のためのはじめての記帳と確定申告
アジェンダ
当動画(全3回)のアジェンダです。
- 初めに簡単に弊社紹介の後
- EC、ネットショップ運営で必要となる記帳の基礎知識 (第1回:当動画)
- 確定申告の方法と利益が出た時に取りえる節税策 (第2回)
- 最後に重要な消費税と今話題のインボイス制度(第3回)
ネットショップ運営で必要となる記帳とは
まず、ネットショップ開業した後、はじめにやらねければならいことは何かというと、
記帳になります。
この記帳作業を図で説明しますと、このような流れになります。
事業活動で取引が発生した後、確定申告書を作成するまでの流れ、プロセスを表したものです。
左から順に説明します。
ビジネスでの取引発生、 企業がモノやサービスを購入した場合、請求書や領収書を受け取ります。
逆に販売する場合は領収書や請求書を発行することになります。
これらの領収書や請求書を証票といいます。
これら領収書、請求書等の証票を元に、帳簿に、日付、取引内容、取引相手などの内容を記入していくことを記帳といいます。
記帳した日々の取引取引容を、月ごとなど、一定期間で集計したものを試算表と呼びます。試算表を見ることで、その月の経営の途中経過を表したものと言えます。
さらに、試算表を一年間の期間に集計し、業績を報告するために調整したものが決算書となります。
個人、法人ともに、この決算書をもとに、税金を記載した確定申告書を作成して、毎年、決算書・確定申告書を税務署に提出します。
決算書
中でも重要なのが決算書です。決算書は、主に、損益計算書と貸借対照表で構成され、銀行や取引先にも提出することが多い書類です。
損益計算書とは、1年間の事業の経営成績を明らかにする書類で、売上、経費、利益の額などが記載されます。
損益計算書からは、
「費用を何に使って」
「どれだけ売上が上がり」
「どれくらい儲かったのか(利益)」
を読み取ることができます。
英語でProfit and Loss Statementと呼ばれるため、P/L(ピー・エル)と略されることもあります。
一方、貸借対照表とは、年末時点の財政状態を明らかにする書類で、預金、売掛金、在庫、借入金などの額などが記載されます。
貸借対照表では、資産と負債の金額が表示されているため、
「どのくらいの資金を調達」し、
「調達した資金をどのように運用しているか」
も読み取ることができます。
英語で、Balance sheetと呼ばれるため、B/S(ビー・エス)と呼ばれることもあります。
青色申告制度
この決算書を作るにあたって、税金面で優遇されるお得な制度があります。
それが青色申告制度と呼ばれるものです。
この制度は税金を減額させるメリットがありますが、まず事前に税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。
さらにその条件として、
帳簿を複式簿記という詳細な方法を使わなければならなず
損益計算書と貸借対照表を作成し、
期限内に申告書を提出
しなければなりません。
複式簿記とは、借方・貸方といった本格的な簿記知識を利用して帳簿を作成する技法のことです。複式簿記での帳簿作成については、この後のマネーフォワードさんの講義で紹介がある「会計ソフト」を利用することをおすすめします。最近の会計ソフトは、本当に優秀で、入力の手間がかからず、記帳が行えます。
青色申告を行えば、所得金額を最大65万円控除(電子申告等の条件あり)できる他、家族給与の経費算入、損失繰越などの特典を利用できるようになります。
ちなみに、青色申告をしない確定申告を白色申告と呼び、記帳は簡単になりますが、特別控除などのメリットはあまり得られません。
売上
では、記帳のやり方について具体的な内容をご紹介したいと思います。
まず、収入です。
ネットショップ運営では、売上を漏らさずに把握することが大変重要になります。
amazon以外に、Yahooや楽天など他店舗で販売していれば当然、すべての売上を計上していく必要があります。
売上の注意点として、あくまで実際に販売した金額を計上する必要があり、販売手数料や送料等を差し引く前の金額であるので注意してください。
また、事業に関係して、補助金・助成金を受給している場合には、雑収入として計上する必要があります。
計上タイミングにも要注意です。
ネットショップでは、売上が確定するタイミングと入金のタイミングにズレが生じます。
会計では、売上が確定した時点で、入金されていなくても売上金額を計上することになります。これを「発生主義」といいます。
例えば、昨年12月に売上が確定したもので、今年1月に入金があった場合、昨年分のの売上として処理しますので注意してください。
費用
続いて経費のお話です。
所得の金額を算定するにあたっては、収入である売上から、売上原価や経費を控除します。
経費を多く計上すると、税金の対象となる所得が小さくなるので、税金の額は当然ながら少なくて済みます。
そこで、重要なことは、どのような経費であれば、計上が認められるかです。
原則、経費として計上できるのは、「事業を行うために直接発生した費用」になります。
ネットショップの運営を考えた場合、次のようなものが経費として挙げられることが多いです。
- プロバイダー料金、サーバー料金などのインターネット関連費用
- amazonに支払う手数料・送料等
- 事業所の家賃、電気代など
- 事務用品などの消耗品費
売上のために必要な接待交際費、宣伝広告費なども事業に直接必要なものであれば経費となります。
逆に、自宅の家賃やプライベートの携帯電話代、食事代、国民年金保険料などは事業に関連しないため経費計上はできません。
また、事業に関連する借入金の返済であっても、返済額は、売上に直接使用するものではないため、経費とは言えません。
決算処理
売上、経費の計上など記帳作業が終わると、最後に決算処理をする必要があります。
決算整理とは、簡単に言うと、売上、費用などをその期に計上すべきものかを、判断して振り分ける作業と言えます。この決算整理を通じて、決算書に計上する金額を確定します。
これにより、損益計算書に年間の売上や利益などの業績が適切に反映されます。また、年末の財政状態が貸借対照表に適切に反映されることになります。
家事按分
決算整理の具体例です。決算処理でよく行う作業の一つに家事按分があります。
家事按分とは、文字通り、家のお金の支出と事業で使った支出を分離することです。つまり、プライベートと仕事の両方で使う支出を、使用割合などに応じて費用を按分することを言います。
EC事業でよくあるのは、自宅を事業で使用しているケースです。
この場合、自宅兼事務所として、生活に使うと事業に使うスペースの経費が混在している状態となります。
図の通り、事務所として使用すれば全額経費として計上できますが、生活費は一切計上できません。
自宅と事業所を兼務させる場合は、事業として使う部分を使用割合に応じて抜き出して計上することになります。
事業で使った分については、使用面積や使用時間などの合理的な基準によって、経費として計上することが可能です。
減価償却
決算処理でもう一つ重要な処理に減価償却です。
取得価格が10万円以上で、使用可能期間が1年以上、時間がたつと価値が段々減少するものが減価償却の対象となる資産になります。
減価償却の対象となる資産は、使用している期間、長期に渡って収益を生み出しますので、購入した年に一度に全額を費用とするのではなく、その耐用年数に按分して、毎年按分した金額を経費計上することになります。
例えば、今年1月に300万円の固定資産を購入し、耐用年数が6年であったとします。原則として、2021年に300万円を一挙に費用に計上するではなく、6年に分けて50万円ずつ減価償却費として経費に計上することになります。