新規事業を別法人として設立
すでに既存事業が順調に成長しており、今後は実店舗とは別にインターネット上で商品を販売するEC(イーコマース)事業を本格的に立ち上げようとする方もいらっしゃることでしょう。
この場合、新規事業については、別会社として法人を設立し、ビジネスの展開を試みることも有効な一手です。
特に2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大(コロナ禍)を経て、EC市場はますます拡大することが予想されます。
時代の流れに乗って、EC事業部を立ち上げる場合、最初は、社内に少人数の専門部署を作って開始することになるかと思います。
その後、EC事業部が軌道に乗り、売上が順調に増加して行った際に、遅かれ早かれ、別会社化する決断に迫られることでしょう。
別会社化の税務メリット
本業の会社とは別に、もう一つ会社を設立するということは、節税の手段が増えることを意味します。
「第2章 節税のメリット」で説明したとおり、中小企業の場合、法人の所得が800万円を境に、法人税率が上昇します。
したがって、法人所得が800万円を超えるのであれば、所得を1社に集中させずに、分社化した別法人で、さらに所得が800万円までの低税率を活用することも有効です。
例えば、2,000万円の所得がある法人が1社であれば、法人税の概算額は、下記の算式Aとなります。
(算式A)
法人税 = 800万円 × 15% + 1,200万円 × 23.2% = 398.4万円
一方、分社化して2社に法人所得1,000万円ずつに分散すれば、法人税の概算額の合計は、下記の算式Bとなます。
(算式B)
法人税 = (800万円 × 15% + 200万円 × 23.2%)×2 = 332.8万円
つまり、分社化した方が単純計算で約65万円(398.4万円-332.8万円)も節税できることになります。
また、別会社は新設法人となりますので、一定期間、消費税の納税義務を免除することも可能です。
さらに、中小企業の場合、交際費の損金限度額は年800万円までとされていますが、別会社化すれば、この限度額の枠が単純計算で2倍となります。
そして、役員に支給される退職金も、両社の役員に就任していれば、2社から受けることもできます。
2社を同時に経営することで、節税の選択肢も数に応じて増えることは特筆に値します。ただ、2社分の法人運営コストが必要となるとともに、節税目的だけの別会社は論外となりますので、ご注意ください。