国内のEC市場だけでなく、海外の消費者に商品を販売する「越境EC」に関心を持つ事業者が増えています。
越境ECは、海外に店舗や現地法人を設けなくても、ECモールや自社サイトを通じて海外市場に参入できる点が大きな魅力です。一方で、国内販売とは異なり、国際配送、為替、関税、現地の税制なども考慮しなければなりません。
今回は、これから越境ECを始めるEC事業者が押さえておきたい実務上のポイントを解説します。
1.販売する商品と対象国を決める
最初に検討したいのが、「何を、どの国に販売するのか」という点です。
日本製であることだけで、必ず海外で売れるとは限りません。現地で入手しにくい、正規品である、独自性があるなど、海外の顧客から見た商品の強みを整理する必要があります。
対象国を選ぶ際は、市場規模だけでなく、言語、決済手段、物流環境、競合商品、法規制なども確認しましょう。まずは海外ECモールで類似商品を検索し、販売価格、レビュー、商品画像、説明文などを調査する方法が有効です。
2.ECモールか自社サイトかを選ぶ
越境ECの主な販売方法には、Amazon、eBay、Shopeeなどの海外ECモールに出店する方法と、Shopifyなどを利用して自社ECサイトを構築する方法があります。
ECモールは集客力があり、海外で知名度のない事業者でも商品を見つけてもらいやすいことがメリットです。一方、販売手数料がかかり、競合との価格競争が起きやすいという注意点があります。
自社サイトは、ブランドの世界観を表現しやすく、顧客データを蓄積できる反面、自社で集客、システム管理、セキュリティ対策を行わなければなりません。
初めて取り組む場合は、ECモールでテスト販売を行い、一定の販売実績を得てから自社サイトを併用する方法も考えられます。
3.すべての費用を含めて販売価格を決める

越境ECでは、商品原価以外にもさまざまな費用が発生します。
具体的には、ECモールの販売手数料、決済手数料、国際送料、倉庫料、ピッキング費用、広告費、返品費用などです。海外の倉庫やFBAを利用する場合には、保管料や現地配送費も必要になります。
売上金の入金額だけを見ていると、実際の利益を把握できません。商品別・販売国別に売上と各種手数料を分け、1商品を販売したときに最終的にいくら利益が残るのかを確認しましょう。
また、外貨建てで販売する場合には、為替変動や換金手数料も考慮した価格設定が必要です。
4.国際配送と通関書類を準備する
海外へ商品を発送する際には、インボイス、税関告知書、送り状などの書類が必要になります。商品によっては、輸出できないものや、販売先国で許可・登録が必要なものもあります。
さらに、通関時には商品を分類する「HSコード」が使用されます。HSコードによって関税率が変わる可能性があるため、正しい分類を確認しておくことが重要です。
少量のテスト販売では自社発送も可能ですが、販売量が増えてきた場合には、越境ECに対応した物流会社や海外倉庫の利用も検討しましょう。
5.返品・問い合わせ対応を事前に決める

越境ECでは、購入者が商品を実際に確認できないため、「イメージと違う」「サイズが合わない」などの理由で返品が発生することがあります。
返品先を日本にするのか、海外倉庫にするのか、送料をどちらが負担するのかを事前に決め、サイト上に分かりやすく表示しておきましょう。
海外ECモールを利用する場合は、モール独自の返品ルールが適用されるため、出店前の確認が必要です。
また、海外の顧客からの問い合わせに対応できる体制も必要です。問い合わせへの返信が遅れると、低評価や販売機会の損失につながる可能性があります。
6.日本の消費税と海外の税金を確認する
課税事業者が国内から商品を輸出する取引は、一定の要件を満たす場合、消費税の輸出免税の対象となります。仕入れや経費で支払った消費税について、申告によって還付を受けられる場合もあります。
ただし、輸出免税を適用するためには、輸出許可書や発送伝票など、輸出した事実を証明する書類を保存しなければなりません。
Amazonなどの海外倉庫へ商品を移動する場合には、誰が輸出者となっているか、輸出関係書類が自社名義になっているかについても確認が必要です。
また、販売先によっては、EUのVATや米国の売上税など、現地での登録・申告義務が発生する可能性があります。ECモールが税金を徴収するケースと、販売事業者自身が対応するケースがあるため、国・地域・販売方法ごとの確認が必要です。
7.小さく始めて数字を検証する

越境ECは、出店しただけですぐに売上が伸びる事業ではありません。
最初から多額の在庫や広告費を投入するのではなく、対象国や商品を絞ってテスト販売を行いましょう。そのうえで、商品別利益、広告費、返品率、在庫回転、リピート率などを確認し、利益が残る販売方法を見つけていくことが重要です。
売上が増えていても、国際送料、販売手数料、広告費、為替差損などにより、利益や資金が残っていない場合があります。売上高だけではなく、粗利益、営業利益、在庫金額、資金繰りまで継続的に確認しましょう。また、国際税務の基礎知識も必要です。(参照:越境EC事業者が知っておくべき国際税務の基礎)
まとめ
越境ECは、国内にいながら海外市場へ販路を広げられる魅力的な事業です。一方で、国内ECにはない物流、関税、為替、税務などの論点があります。
海外販売を始める際は、次の点を確認しておきましょう。
- 販売する商品と対象国
- ECモールと自社サイトの選択
- 手数料や国際送料を含めた販売価格
- 通関書類とHSコード
- 返品・問い合わせ対応
- 消費税の輸出免税と海外の税金
- 商品別・販売国別の採算管理
越境ECを成功させるためには、販売戦略だけでなく、会計・税務・物流を含めた管理体制が欠かせません。海外販売を始める段階から、売上や手数料、在庫、利益を正確に把握できる経理の仕組みを整えておきましょう。
参考文献:「まずは、越境ECと海外販売の基礎知識を押えよう」
