越境ECや海外販路の開拓を支援する事業者にとって、2026年度に注目したい補助金が公募されています。
それが、ジェトロ(日本貿易振興機構)が実施する令和8年度「中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金」です。
本補助金は、海外展開を目指す中堅・中小企業の輸出拡大を後押しするため、複数の民間事業者等が連携して輸出支援の仕組みを構築する取組を支援する制度です。
越境EC、海外向け物流、通関、海外マーケティング、IT・デジタル技術、地域商社などが連携し、中堅・中小企業の輸出拡大を支援する事業が対象となる可能性があります。
この記事では、EC事業者・越境EC支援事業者の視点から、補助金の概要、応募要件、補助金額、対象経費、申請スケジュールをわかりやすく解説します。
令和8年度「中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金」とは?

この補助金は、中堅・中小企業の輸出拡大を支援するため、複数の事業者が連携して輸出支援体制を構築する取組に対して交付される補助金です。
海外展開を目指す中堅・中小企業は増えている一方で、実際に輸出や越境ECを進めるには、販路開拓、物流、通関、現地規制、決済、マーケティングなど、さまざまな課題があります。
そこで本事業では、こうした課題に対応できる民間の輸出支援事業者同士の連携を促進し、中堅・中小企業の輸出拡大につながる効果的な取組を支援します。
ただし、注意すべき点として、1社だけの海外展開にとどまる取組は対象外とされています。あくまで、複数の中堅・中小企業の輸出を支援する「支援する側」の事業が対象です。
補助金の基本情報
| 補助金名 | 令和8年度 中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金 |
|---|---|
| 実施機関 | ジェトロ(日本貿易振興機構) |
| 補助金額 | 1件あたり最大2,000万円を目安 |
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1 |
| 採択予定件数 | 4件程度 |
| 対象国・地域 | 全世界 ※海外危険情報・感染症危険情報レベル3以上の国・地域への渡航を伴う事業は、原則実施不可 |
| 事業実施期間 | 補助金交付決定日から2027年1月31日まで |
| 公募期間 | 2026年4月27日(月)から2026年5月25日(月)15時00分まで |
どのような事業が対象になるのか
本補助金の対象となるのは、民間の輸出支援事業者間の連携を軸とした、中堅・中小企業の輸出拡大につながる取組です。
たとえば、次のような事業が考えられます。
- 地域商社、物流会社、通関業者、IT事業者が連携し、中小企業の越境EC展開を支援する事業
- 海外現地倉庫や物流網を共有化し、輸出コストの削減を図る事業
- 現地ECモールや海外プラットフォームを活用し、日本商品の販売力を高める事業
- AIやデジタル技術を活用し、海外向けの商品訴求やマーケティングを高度化する事業
- 地域の有望商材を海外市場向けに展開するため、複数事業者で販路開拓を行う事業
越境ECに取り組む企業にとっては、自社単独のEC展開費用を補助してもらう制度というよりも、複数の中堅・中小企業の輸出や越境ECを支援する仕組みを構築するための補助金と理解するのがよいでしょう。
応募するための主な要件

この補助金は、単独事業者では申請できません。複数の事業者で連携体、いわゆるコンソーシアムを構成して申請する必要があります。
1. 2者以上の連携体で申請すること
本補助金では、中堅・中小企業を中心とした2者以上の連携体を構成する必要があります。
申請は、連携体の中核となる事業者である「コア事業者」が行います。連携体には、コア事業者のほか、パートナー事業者が参加します。
たとえば、越境EC支援を行う場合には、以下のような連携体が考えられます。
- 越境EC支援会社
- 地域商社
- 物流会社
- 通関業者
- 海外マーケティング会社
- ITベンダー
- 地域金融機関
なお、単なる外注先や一時的な取引先は、連携体とはみなされない可能性があります。各事業者の役割分担や責任体制を明確にすることが重要です。
2. コア事業者が日本に拠点を有していること
申請の中核となるコア事業者は、日本国内に拠点を有している必要があります。
3. 地域商社等の参画、3者以上の連携、県域を越える支援事業のいずれかを満たすこと
応募にあたっては、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 地域商社等が参画していること
- 3者以上で連携していること
- 県域を越える支援事業であること
地域商社等には、地域商社、地域経済団体、地域金融機関などが含まれます。
越境EC支援事業の場合、複数の都道府県に所在する中小企業を支援するスキームであれば、「県域を越える支援事業」に該当する可能性があります。
4. 5社以上の中堅・中小企業の輸出を支援すること
本事業の期間中に、輸出を支援する中堅・中小企業の数が5社以上であることも要件とされています。
そのため、自社の商品を海外販売するためだけの取組ではなく、複数の中堅・中小企業に対して輸出支援サービスを提供する事業設計が必要です。
5. 過去事業と同一内容でないこと
過去に実施された「中堅・中小企業輸出ビジネスモデル実証事業」や「中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業」で補助を受けた事業と同一内容の取組は、申請できない可能性があります。
過去に類似事業で採択を受けている場合は、今回の申請内容が新規性・発展性を有しているかを確認する必要があります。
補助対象経費
補助対象となる経費は、当該事業のために使用されることが明確に特定できるものに限られます。
主な補助対象経費は以下のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 人件費 | 事業に従事するスタッフの人件費 |
| 旅費 | 国内・海外出張に係る費用 |
| 会議費 | 打ち合わせ、説明会、セミナー開催等に係る費用 |
| 謝金 | 専門家、講師、アドバイザー等への謝礼 |
| 備品費 | 事業実施に必要な備品の購入費 |
| 借料・損料 | 会場、機器、設備等のレンタル費用 |
| 消耗品費 | 事務用品等の消耗品 |
| 印刷製本費 | パンフレット、資料、チラシ等の印刷費用 |
| 補助員人件費 | 補助的な業務に従事するスタッフの費用 |
| 委託・外注費 | 外部事業者への業務委託費、制作費、調査費等 |
越境EC支援の文脈では、海外市場調査、海外向け販売ページの制作、多言語コンテンツ作成、海外向け広告・プロモーション、現地ECモール対応、物流スキーム構築、専門家への相談費用などが検討対象となる可能性があります。
ただし、実際に補助対象となるかどうかは、募集要領や交付規程に基づいて判断されます。申請前に必ず最新の公募要領を確認しましょう。
公募スケジュールと申請方法
令和8年度の公募期間は、2026年4月27日(月)から2026年5月25日(月)15時00分までです。
| 公募開始 | 2026年4月27日(月) |
|---|---|
| 公募締切 | 2026年5月25日(月)15時00分 |
| 質問受付期限 | 2026年5月18日(月)まで |
| 事業実施期限 | 2027年1月31日まで |
| 申請方法 | 原則としてjGrants(Jグランツ)により申請 |
jGrantsを利用するには、gBizIDの取得が必要です。gBizIDを取得していない場合、申請準備に時間がかかる可能性があるため、早めに確認しておきましょう。
なお、gBizIDが取得できない場合には、電子メールでの申請方法も案内されています。詳細はジェトロの公募ページおよび募集要領を確認してください。
越境EC・EC支援事業者が活用を検討する際のポイント
1. 「支援を受ける側」ではなく「支援する側」の補助金である
本補助金は、単に自社の越境ECサイトを立ち上げるための補助金ではありません。
複数の中堅・中小企業の輸出や海外販路開拓を支援する事業者側が、連携体を組んで申請する制度です。
そのため、EC事業者であっても、自社の商品販売だけでなく、他社の商品を海外に展開する支援機能を持つ場合に活用の余地があります。
2. 連携体の設計が採択のカギになる
この補助金では、コンソーシアムの構成が非常に重要です。
越境ECに必要な機能は、販売ページの構築だけではありません。海外市場の選定、物流、通関、決済、広告運用、現地規制対応、顧客対応など、複数の専門領域が関係します。
そのため、地域商社、物流会社、通関業者、IT事業者、マーケティング会社、金融機関などと連携し、実効性のある支援体制を構築することが重要です。
3. 補助率2分の1を前提に資金計画を立てる
補助金額は1件あたり最大2,000万円を目安とされていますが、補助率は補助対象経費の2分の1です。
つまり、補助対象経費の全額が補助されるわけではありません。残りの費用は自己負担となるため、事業全体の資金計画を慎重に立てる必要があります。
4. 公募期間が短いため、早めの準備が必要
公募期間は約1か月と短く、申請には事業計画書、連携体の構成、役割分担、収支計画、必要書類の準備が必要です。
特に、複数の事業者でコンソーシアムを組む場合、各社との調整に時間がかかります。
申請を検討している場合は、早い段階で連携先の選定、事業内容の整理、対象経費の確認を進めることが大切です。
税理士・専門家に相談するメリット

補助金の申請では、制度の要件を満たしているかどうかだけでなく、事業計画の妥当性、対象経費の整理、資金計画、収支見通し、連携体の役割分担などを明確にする必要があります。
特に、越境ECや輸出支援事業は、通常の国内ECとは異なり、海外取引、為替、物流、消費税、インボイス、関税、海外マーケティングなど、検討すべき論点が多くあります。
申請前の段階から税理士等の専門家に相談することで、制度要件に沿った事業設計や、補助対象経費の整理がしやすくなります。
まとめ
令和8年度「中堅・中小企業輸出支援エコシステム形成事業費補助金」は、越境ECや海外販路開拓を支援する事業者にとって、非常に注目度の高い補助金です。
補助金額は1件あたり最大2,000万円を目安、補助率は2分の1とされており、複数の事業者が連携して中堅・中小企業の輸出拡大を支援する取組が対象となります。
一方で、単独申請ができないこと、5社以上の中堅・中小企業を支援する必要があること、個社の海外展開だけにとどまる事業は対象外であることなど、注意すべき要件もあります。
越境ECや輸出支援事業で本補助金の活用を検討している場合は、早めに公募要領を確認し、連携体の組成、事業計画、対象経費、申請スケジュールを整理しておきましょう。
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